居住介護支援事業を開業するには

居宅介護支援事業とは

居宅介護支援事業とは、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、居宅介護支援事業所に所属する介護支援専門員=ケアマネジャー(以下、ケアマネジャー)が居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、それに基づいて適切な支援が提供されるよう、各サービス事業所や関係機関との連絡・調整を行うサービスのことです。ケアマネジャーが行うサービスのこと、と言えばわかりやすいかもしれません。

居宅介護支援事業は、平成30年4月より、指定権限が都道府県や中核市から市町村に移譲されました。従って、指定申請は、事業所を置く予定の市町村で行います。

開業に必要な資格や条件

では実際に、事業者としてサービスを提供する際に必要な4つの基準を紹介します。

■法人であること

株式会社や合同会社、NPO法人、社会福祉法人といった「法人」を設立して法人格を得ることが必須です。法人格でない場合は、まず会社設立手続きを行います。

また、すでに法人格を持つ場合は、定款の事業目的に「居住介護支援事業」という文言があることを確認します。もし記載がない場合は、定款の事業目的を追記する必要があります。

■人員に関する基準

  • 管理者を置くこと
  • 常勤のケアマネジャーを1人以上置くこと

※管理者とケアマネジャーは兼務可能

【資格要件】

管理者は「主任ケアマネジャー」の資格取得者であること

居宅介護支援事業所の管理者について国は、2021年度から「主任ケアマネジャー」とする方針を固めていました。ただでさえ、取得が難しいとされるケアマネジャーですから、その上を行く「主任ケアマネジャー」の資格保持者はさらに少ないでしょう。

2019年に行われた厚生労働省の調査で、「管理者が主任ケアマネジャーではない」と回答した事業所が40.9%、主任ケアマネージャーの研修について「経過措置期間中に修了できる見込みはない」とした事業所が13.4%であったとする結果を受け、居宅介護支援事業所の管理者要件を主任ケアマネージャーとする経過措置の延長を正式決定しています。

2020年度末の時点で、管理者が主任ケアマネージャーでない事業所だけが、経過措置の延長を受けることが可能です。その主任ケアマネージャーでない管理者が、2021年度以降も管理者を務め続けていく場合に限り、2026年度末まで6年間、経過措置を受けることができます。

主任ケアマネジャーになるための研修を受けるためには、以下のような条件があります。

  • 専任のケアマネジャーとして働いた期間が通算5年以上
  • ケアマネジメントリーダー養成研修修了者、または日本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャーであり、専任のケアマネジャーとして働いた期間が通算3年以上ある
  • 主任ケアマネジャーに準ずる人として、現在、地域包括支援センターに配置されている人
  • ケアマネジャーの業務に関して十分な知識と経験を有し、都道府県に適当と認められた人

受講するには上記のいずれかに該当しなければなりません。自治体によっては上記以外の要件を設定しているところもあるので確認しましょう。 いずれにしろ、経過措置が取られている間に、主任ケアマネジャーの資格は取得しておく必要がありそうです。

■設備に関する基準

・事務室

 広さの規定はありませんが、事務をとる人数分の机やイスなどを設置できるスペースが必要なことと、利用者に関する書類を保管するための鍵付きキャビネットを設置する必要があります。

・相談室

 利用者やその家族が相談をするための部屋。相談者のプライバシー保護のため、事務室と相談室が区分されていることが必要です。個室を設けることが難しければ、事務室から相談室が見えないようにパーティションで区分することでも可能です。

・会議室

 サービス担当者会議を行うスペース。事務室を会議室として使用することも可能です。

・手洗い場

 感染症の予防のため、手指を消毒できる洗面所及びせっけんやアルコール消毒液が必要。

・自宅での開業も可能

居宅介護支援事業所を自宅で開業することも可能です。ただし、住居スペースと居宅介護支援事業所のスペースが完全に区分されていて、居宅介護支援事業所の独立性が保たれていることが必要です。

二世帯住宅のように居住部分と事業所部分の入り口が別々になっている場合だと開業しやすいのですが、自宅の一室を事業スペースとしたい場合、事業スペースの手洗い場や、住居スペースとは別の入口を確保する必要があります。各都道府県・市町村によって対応が異なりますので、指定申請を行う役所に事前に確認しておきましょう。

■運営に関する基準

厚生労働省令の定める運営基準に従って適正な事業が行えること。

  • サービス提供開始に伴い、利用者とその家族に対し、内容・手続きの説明をして同意を得ること
  • 正当な理由なく、サービス提供拒否の禁止
  • 受給資格確認
  • 秘密保持

他、多数の運営基準があります。

施設開業時にかかる費用

上記をはじめとする基準を満たすことができると、開業の手続きが可能となります。居住介護支援事業所開業時に、どういった費用がかかるのかをまとめました。

■法人設立費用

株式会社、合同会社など、法人のスタイルによって設立費用が異なります。一方、NPO法人の場合は、ほとんど費用がかかりません。ただし、株式会社や合同会社と比べて認可されるまでに3カ月半~4カ月程度の時間を要しますので、開業する時期から逆算して認可申請をする計画性が必要です。

■施設(事務所)備品購入費

居住介護支援事業の指定申請時点で、居住介護支援事業の運営を始められる状態である必要があります。これを証明するために、施設(事務所)内の写真を提出します。必要となる主な備品類は、下記の通りです。

  • 電話機・FAX機(一体型でも可)
  • パソコン、プリンター
  • 書類保管用の鍵付き書棚・書庫
  • 事務スペース用/相談スペース用の机といす
  • パーティションなどのついたて

■資格取得費用


現在ケアマネジャーの資格を有する人でも、居宅介護支援事業所の管理者要件が、2021年度から主任ケアマネジャーに限定されることに伴い、研修を受講する必要が出てきました。受講費用は、都道府県別に異なり、2017年度の実績では、最も高かったのは広島県の6万2000円となっています。

■国からの融資、助成金が受けられる

開業資金はじめ、介護保険は申請2カ月後の入金ということを考えると、開業後4~5カ月分の運転資金があるとまずは安心です。自己資金が用意できればいうことはありませんが、用意できない場合、公的機関からの融資や助成金制度を利用することも一考です。

【助成金】

介護基盤人材確保助成金…介護関連事業主が新サービスの提供などの理由で特定労働者を雇い入れた場合、対象労働者一人あたり上限70万円まで助成されます。

介護雇用管理助成金…就業規則や賃金規定の作成、採用パンフレットの作成、求人サイトや新聞などで従業員を募集した場合、実際にかかった費用の半額、上限100万円まで助成されます。

介護未経験者等確保助成金…介護関係業務の未経験者を雇用し、1年以上継続雇用が確実と認められる場合に助成されます。

受給資格者創業支援助成金…雇用保険の受給資格者自らが創業し、創業後1年以内に従事者を雇用し、雇用保険の適用事業主になった場合に助成されます。

尚、これらの助成金は、会社を設立したり、従業員を雇用したりしてから6ヶ月~10ヶ月後に支給されます。

【融資】

日本政策金融公庫…介護事業者が利用できる日本政策金融公庫が扱う融資は次のようなものがあります。

新創業融資制度(無担保、無保証)…上限1500万円 事業を始める場合、事業を始めて間もない場合に融資が受けられます。

新規開業資金…上限7200万円(うち運転資金は4800万円以内) 事業をはじめる場合、事業をはじめて概ね5年以内に対して。

女性、若者/シニア起業家資金…上限7200万円(うち運転資金は4800万円以内) 女性、30才未満、55歳以上の方が融資を受けられる対象です。

ほかにも、融資上限額は日本制作金融公庫よりも少額なものの、都道府県や市町村などの自治体が手掛けている公的融資もあります。

居住介護支援事業を開業する特徴やメリット

居住介護支援事業にはどのようなメリットがあるのか、以下にまとめました。

■低資金でスタートできる

老人ホームなどの大がかりな施設と違い、居宅介護支援事業所の場合は自宅開業という方法もあり、あまりお金をかけずに開業することが可能です。

■一人でも開業できる

無資格・未経験の人でも、主任ケアマネジャー資格を有する人材が確保できれば開業が可能です。また、自分自身で主任ケアマネジャーの資格を持っていれば一人で開業することができます。

■ニーズが高く、やり甲斐のある仕事

これからますます要介護者が増えていく社会情勢を考えると、ニーズが高まるであろうことは想像に難くありません。サービス利用者は、ケアプランがなければ介護保険サービスを利用することができないため、事業者はもちろん、利用者にとってもとても重要なサービスなのです。このように、居住介護支援事業は、社会に役立つやり甲斐のある仕事であると言えます。

まとめ

いかがでしたか?

居住介護支援事業は、介護業界で働いてきたのであれば、これまでの経験から問題点や改善点を見出し、自分なりの介護サービスを提供することができます。たとえ介護無資格で経験がなくても、地域に貢献できるとして起業する人もいます。

これからますますニーズが高まると予想される居住介護支援事業だけに、やり甲斐もひとしおです。ぜひ一度、開業をご検討ください。

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